
まだまだ日中の暑さが厳しいとはいいながらも、朝晩は少しだけ涼しい風が吹くようになった今日この頃。
もう少し季節が進めば、空気が澄み始めて、お月様のきれいに見える時期がやってきます。
という訳で、今回のテーマは日本でもお馴染み(?)の【中秋節】。
その他の多くの日本の行事もそうですが、これも昔々に中国から伝わってきた行事の一つです。
現代の日本でもこの中秋節が「十五夜」として人々に親しまれているように、今の中国に住む人々にとっても、この中秋節は生活に根差した節句の一つ。
それでは、早速詳しく見ていきましょう!!
① そもそも中秋節ってなんだっけ?

中秋節は、古代中国の天体崇拝の名残、月を敬う習慣が元になっていると言われています。
太陽と並んで、月は空に現れる代表的な天体の一つ。
古代中国の人々は、古来より、そんな月に特別な力を感じ、敬い、大切に祭ってきたのです。
その習慣は漢代に広まり、唐・宋・明・清などの各時代を通して、広く人々に親しまれてきました。
現在では、旧暦の8月15日(場所によっては16日)を「中秋節」としています。
2008年には、国家法定祝日の1つに定められました。
中秋節は、今の中国では「春節」「清明節」「端午節」と並ぶ、中国の伝統的な四大節句の1つに数えられています。

ちなみにですが、2020年の中秋節は、10月1日、そう中国の国慶節の日!
国慶節休みと相まって、今年は、10月1日~8日が連休となるようです。
② 中秋節にはどんなことをするの?
月がきれいな中秋節には、中国各地で様々なイベントが行われます。
中国の国土面積は、日本のおよそ25倍。
それだけ広い国ですから、その風習も地域によって様々で、北方と南方とでも、大きな違いがあります。
その中で、今回は代表的な3つに絞ってご紹介したいと思います。
(1)月を鑑賞する

中秋節の月は、丸くて白くてとてもきれい。
古来より、中秋節の夜には、人々は外に出て、その美しさを楽しんできました。
唐の時代には、色々な詩人が月を詠んだ名作を残したと言われています。
日本でも、お月見の際にはススキや月見団子をお供えする習慣がありますが、中国にも、月餅やスイカ、スモモ、ナツメ、ブドウなどをお供えする風習が残っています。
月を見上げ、その美しさを感じる心は、昔も今も、日本も中国も変わらないのかもしれません。
(2) 月餅を食べる

中華街などで売られていることから、一度は見たことのある方も多いのではないでしょうか?
中国では、中秋節に月餅を食べる習慣があります。
英語では、「moon cake」などと翻訳されたりもするようですが、個人的には日本人がイメージする洋菓子店などで売られているケーキよりも、ずっしり食べ応えがあるように感じます。
伝統的な月餅の中には、アーモンドやナツメ、胡麻、ハスの実、サンザシなどで作られた餡がたっぷり入っています。
ですが最近では、西洋風な月餅、餡にイチゴやライチ、パイナップルなどフルーツを使ったもの、搾菜や肉などしょっぱい餡が入ったものなど、様々な種類の月餅が売られています。
もしチャンスがあれば、新しいフレーバーを試してみるのも面白いかもしれません♪
(3)ランタンを灯す

中国で有名なランタンを灯す節句といえば「元宵節」ですが、それほど大規模なものではないにせよ、中秋節にもランタンを灯す風習があります。
私自身は実際に見たことがないのですが、香港や台湾、シンガポールなどでも、中秋節の期間中に、ランタンフェスティバルのような催しが行われているようです。
夜空に浮かぶ美しい月と、地上に灯る数々のランタン…。とても幻想的なイベントですね!
③ 中秋節にまつわるストーリー

「月」というだけで、美しく神秘的な印象がありますよね。
古来、人は月に惹きつけられ、様々な物語を生み出してきました。
そこでここでは、中秋節に纏わる代表的なストーリーをご紹介していきたいと思います。
【嫦娥、月へ昇る】
昔々、空に突然太陽が10個も現れて、地上に住む人々はあまりの暑さに苦しんでいました。
そんな危機を救ったのが、弓の名人である后羿(こうげい)という英雄です。
彼は、得意の弓矢で9つの太陽を次々と撃ち落とし、残り1つの太陽に向かっては、「人々の安寧のため、今後は毎日同じ時間に昇って、同じ時間に沈むように」と言い含めました。
こうして、この世に平和な日々が戻ってきたのです。

さて、崑崙山に住む西王母(仙女の女王的なイメージ)はある日、そんな后羿に一粒の不老不死の仙薬を贈ります。人間がこの薬を読むと、不老不死となって、天に昇れるのです。
ですが、后羿には、最愛の妻、嫦娥(じょうが)がいました。
自分が天に昇ったら、美しく優しい妻と一緒に暮らせなくなってしまいます。
そこで、后羿は嫦娥に薬を宝箱の中に隠してしまっておくよう言いました。

ところが、后羿の弟子、 逄蒙(ほうもう)はこの薬が欲しくてたまりません。
8月15日の朝、后羿が他の弟子とともに出かけてしまうと、逄蒙は仮病を使って残り、嫦娥に薬を出すよう迫りました。嫦娥が拒むと、逄蒙はあちこちひっくり返して探し回り、あと少しで仙薬を彼に見つけられそうになってしまいます。
「こんな悪い人に不老不死の薬を呑ませたら、苦しむ民が増えてしまう。それよりは…」
とっさの判断で嫦娥は自らその仙薬を呑み、そのまま月へと昇ってしまいます。

帰ってきた夫の后羿は妻の姿がないことに気付き、外に出て空を見上げると、なんと妻は月から自分のことを見ているではありませんか!
「嫦娥、嫦娥…!!!」
后羿はいつまでも愛しい妻の名を呼び続けていました。
その後、人々は彼女が好きだった食べ物をお供えして彼女を偲ぶようになり、その習慣は中秋節となって今も続いているのです。
おしまい
ただ、このお話については、嫦娥が夫である后羿からこっそり薬を盗んだというもの、また夫の后羿が暴君であり、西王母から仙薬を盗んできたため、后羿から民を救おうとして嫦娥自ら薬を呑んだものなど、様々なバージョンが存在しています。
ちなみに、現代中国の月探査計画、「嫦娥計画(中国語:嫦娥工程)」にも、この伝説の美女、嫦娥の名がつけられています。
終わりに

今回改めて調べてみて、この中秋節は中国や日本だけではなく、韓国やベトナムにもその習慣があることがわかりました。
韓国では「秋夕(チュソク)」、ベトナムでは「テット・チュン・トゥー」などと呼ばれているようです。
昨年読んだ韓国の小説「82年生まれ、キム・ジヨン」の中にも、主婦である主人公のジヨンが、秋夕の日に夫の実家を訪問するという描写が出てきます。
韓国では、この秋夕に帰省して墓参りをする風習があるようです。
形は違えど、中秋節は東アジアで広く親しまれている行事なんですね!
日本では十五夜としてお馴染みのこの行事ですが、月餅を食べるなどして、手近なところから中秋節としての雰囲気を味わってみるのも良いかもしれません♪
私が講師を務めるストアカでも、折に触れて中国の文化をご紹介していければと思っております。
レッスンで皆様にお会いできるのを楽しみにしております(^^)